違法アップロードに利益を吸われて不愉快だ! と思うのが不毛な理由


以前、成年向け漫画家、ぐじら4号さんが、「違法ダウンロードに幻滅して描く気をなくした」というツイートが話題になったよな。

ああ……あったね。1冊の単行本を作るのにはとてつもない労力がかかるのに、他人の褌で相撲を取られた上にDL数まで上がっていたら萎えるよね……。

違法アップロードの問題はマンガに留まらず、音楽・映画・ゲーム・アニメと幅広い分野で問題視されている。違法ダウンロードも刑罰化しているし、そうでなくても倫理的に到底許される話ではない。

今回は、それを踏まえた上で、あくまで感情論を抜きに、違法アップロードサイトへの嫌悪感を示すことの不毛さを説いてみたいと思う。

あの、なんでそんな、作者に喧嘩を売るような記事を書くの……?

つい先日も、Twitterにて「1回ダウンロードするごとに500円の利益が作者から吸われている。違法DL数を見ると殺人的だ」「この違法行為で潤っている奴がいるのが許せない」というツイートが流れてきた。ご心労お察し申し上げる。気持ちは分かるなんて驕るつもりもないが、同じ創作家として、確かに許せないし、腹立たしい思いは全く理解できないわけではない。

が、怒ったところで違法アップロードが消えるわけではない。それなら、奴ら無法者たちがどれだけ得をしているのかを現実的に知っていただくことで、少しでも「怒るに値しない」と思ってもらいたいんだ。

なるほど。だいたい分かったよ。それじゃ、さっそく書いていってくださいな。

違法アップロード者によってどれほど損益が出ているのか?

違法ダウンロードした人が、実際にお金を払う確率

さて、これはよく言われる話なのだが、違法ダウンロード数 × 本来の価格 = 作者の損益 ではない。

え、なんで? 500円のマンガが1000回ダウンロードされていたら、500 × 1000 = 50万円の損益じゃないの?

違法ダウンロードに手を染める連中は、それが無料で手に入るからダウンロードするのであって、仮に全ての違法ダウンロードを撲滅できたところで、同じマンガを買うわけじゃない。

音楽CDの低迷を違法アップロードのせいにしていたレコード会社の話は有名だが、実際は着うたや音楽配信サービスの普及と、国内の音楽コンテンツそのものの衰退が囁かれて久しい。それと似たようなもんだ。酷な言い方をするなら、取らぬ狸の皮算用ってこと。

さ、さすがにそれは酷すぎるのでは。

さっきも言ったが、感情論を抜きにした説明だ。苛立つのが百も承知なのは先に書いた。あくまで現実を見据えた話をしているんだよ。

うーん。でも、全ての人が有料化で離れるわけじゃないよね? 「別にマンガを絶対買わないわけじゃないけど、無料と言われるとついそっちに……」という人もいるだろうし。そういう潜在的なニーズってどうやって計算するの?

そうだな。後ろめたいことをしている手前、「あなたは違法ダウンロードをしていますか?」と聞いたところで正しい数値は得られない。厳密に計るのは無理だ。

だが、アプリ市場に関して興味深いデータがある。以下の記事だ。

ソシャゲ風課金で稼ごうとした無料辞書アプリ「大辞泉」が有料化、課金率は採算ラインの10分の1

「大辞泉」は、同社が小学館からラインセンスを受けて提供している人気の無料辞書アプリで、昨年5月のリリース以降ダウンロード数を伸ばし、現在までで15万ダウンロードを記録していた。

(中略)

しかし、1日あたりの平均ユニークユーザ数は1,250人に留まった。同社は、”有料”の辞書アプリとして考えれば十分に多いが「無料サービスとして考えるならば、多くはない」との見方を示している。
さらに重要な指標である課金率だが、こちらも厳しい結果が出たという。
課金率は、ズバリ0.5%。1%いきませんでした。正直にいって、これはかなり低い。採算とれるかどうかのラインは5%程度なので、まったく届いていない」と同社は課金率が採算ラインの10分の1程度だったことを明らかにしており、辞書アプリにフリーミアムモデルを適用するという戦略が間違っていたと結論づけている。

http://appllio.com/20140408-5087-daijisen-is-no-longer-free

マンガとアプリを同列に語るのは暴論なのは承知の上。無料で手にする人が有料化の際にどれだけ流れるのかのデータが少ないので、今回はアプリの記事を引用する。

このアプリ、フリーミアム課金(基本機能を無料で提供し、追加機能を有料にする課金モデル)なんだね。無料版は機能回数制限をつけて、課金によって制限が解除できる……と。これって、無料でマンガを読んでいた人に対して、「続きは課金だけどどうする?」って誘導してみた状況と似ているし、ある程度は参考にできるかも?

で、肝心のデータだが、辞書アプリという需要にも関わらず課金率が0.5%となっている。さっきのマンガで置き換えると、25000ダウンロードの場合は、125冊。1000ダウンロードなら5冊だ。

更に追い打ちをかけよう。500円の単行本が1冊売れたからといって、作者が500円儲かるわけじゃないよな。500円ってのはあくまで売り上げであって、そこから最低でも原価・販売費・管理費を差し引いた営業利益で計算しないと、現実的な話はできない。

マンガの利益が具体的にどうなっているのか知らないので、ゲームブロガーらしくゲームで話を進めてみるが、8000円のゲームソフトが1本売れた場合、開発メーカーへ還元される利益はだいたい2000円と言われている(もちろん、場合によりけりなのであくまで参考値)。500円のマンガも同じと例えるなら、作者への還元率は125円だ。

これを踏まえてもう一度計算しよう。
1冊500円の単行本のマンガにおいて、

25000ダウンロードによる作者の損益は、
125(円) × 25000(回) × 0.005(購入率) = 15625(円)

1000ダウンロードによる作者の損益は、
125(円) × 1000(回) × 0.005(購入率) = 625(円)

まあ、ガバガバな計算なのは分かっているさ。これが正確な損益だなんて言わない。

だがな。「違法ダウンロード者が全て本来の価格で購入することを前提に」「価格の全てが作者に還元される」計算よりはよっぽど現実的な数値だと思わないか?

まあ、感情論を抜きにして見れば、確かに取るに足らない存在と言えるかもね。

違法アップロード者はどれほど儲けているのか?

では次。「この違法行為で潤っている奴がいるのが許せない」について。マンガに限らず、アニメなどにも見られる現象なのだが、違法アップロードサイトの管理人が、サイトに貼った広告で収入を得ているのが許せない、と。

お聞きしたいが、具体的に奴らがどれほど稼いでいるのか、計算したことがあるか?

無いわよ。そもそも1円も渡したくないって話なんだろうけど、感情論は抜きなんでしょ?

感情論を交えると、考察が泥沼化するからな。省いて考えたほうがいい時もあるんだよ。

で、計算だが。
アフィリエイト広告にもいくつか種類があるが、この手のサイトに貼られているのは大抵が「広告クリックによって成果が発生する」広告である。
他にも「商品の購入によって報酬が発生する」ものあるが、タダ食いしたい連中相手にそのような広告を貼っても効果が薄いのは明らかだ。

クリック型で一番有名なのはGoogleアドセンスだが、こちらはアダルトNGな上に、違法サイトなどに貼り付けようものなら審査すら通らずに永久凍結される。
アダルトOKかつ違法サイトで蔓延している広告の代表格に「i-mobile」があり、今回はこちらで話を進めていく。
(i-mobileそのものは健全な広告サービスなのでお間違えなきよう)

i-mobileは昔俺も使ったことがあるので、かなり現実的な話ができるぞ。

え? もしかして違法サイト運営してたの? うわードン引き。

んなわけねえだろ! 法と倫理に従った真っ当なサイトだよ! このブログだってそうだろ!?

えっ?

えっ?

……まあいい。話を進めるぞ。クリック型の広告の利益は、以下の計算式で求めることができる。

クリック数 × クリック単価 = 広告収入

1クリック毎に何円なのかをクリック単価と言い、広告によって異なるが、大体i-mobileだと多くて5円、平均で2円ほどだ。

クリック数ってどうやって割り出すの? 1日100アクセスのサイトと、10万アクセスのサイトとでは、クリック数が異なるよね?

良い質問だ。正確な数値はサイト運営者のみぞ知るところだが、以下の計算式でおおまかな数値を出すことはできる。

記事の閲覧数 × CTR(クリック率) = クリック数

CTRというのは、「広告が表示された際にそれをクリックするユーザーの割合」で、これは広告サービスや広告の表示位置によって大体どれも同じなんだ。

シオンが広告を貼っていた時のクリック率はどれくらいだったの?

0.1%ぐらいかな。1000人に1人の割合。

ええええ!? そんなに低いの!?

……アフィリエイトなんて大体そんなもんだぞ? うさん臭い稼ぎ話はほぼ盛ってると見ていい。

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参考までに、ぐじら4号さんの作品が違法アップロードされていたサイトを例に挙げてみる。
このサイトの場合、上部にある赤枠で囲った部分が広告エリアだ。

広告をどの位置に貼るのが最も効果的かには諸説あるが、Googleはコンテンツの上部にバナー広告を貼る行為は利益率が低いとしている。
更に、このようなサイトに訪れるようなユーザーは、最初から同人誌のみが目当てであり、広告に関心を示す率は通常より低いものと思われる。
そのため、こちらの経験から導き出される0.1%より実際はもっと低いものと思われるが、憶測で低く見積もっても仕方ないので、今回は同じものとして話を進める。

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DL数だけでは正確な数値が分からないが、ご丁寧にもこちらのサイトは閲覧数まで記載している。これによると、閲覧数はダウンロード数のおよそ2.5倍なので、これを参考に計算してみよう。

25000ダウンロードによる閲覧数は
25000(回) × 2.5(閲覧倍率) = 62500(PV)

そこから割り出されるサイト運営者の利益は
2(円) × 62500(PV) × 0.001(CTR) = 125(円)

1000ダウンロードの場合は
2(円) × 1000(回) × 2.5(閲覧倍率) × 0.001(CTR) = 5(円)

いいかい諸君? 仮に違法アップロードされたマンガが1000回ダウンロードされたとして、クズ運営者の懐に入るお金はたったの5円だ。こちらは昔の経験に基づくリアルな数値を元にしているので、さっきよりもかなり実数値に近いぞ。

加えて、ドメイン費用やサーバー運営の費用もかかる。言うまでもなく、いつ法規制に晒されるか分からないリスクも負う。更に、Googleは違法サイトを検索結果から除外する活動に前向きで、Google自身が参入している音楽と映画に関しては、すでに相当数の違法サイトが検索結果から消えている。

サイトを運営してもらうとわかると思うが、アクセス数の8割は検索エンジン、残りの2割はSNSからだ。検索エンジンからそっぽを向かれると相当手痛い被害をうけるのだが、そのペナルティもいつ来るか分からないというリスクと戦わねばならない。絶対に勝てる争いではないが。

違法サイトがSNSでの拡散に期待できるわけもないし、実質Googleから消されたら、そのサイトは死んだも同然だよね。

まとめ

以上を踏まえて、なお美味しい蜜を吸っていると言えるだろうか? そんなことはないだろう。

連中は、単に神だのなんだの持て囃されたいだけだ。どうせリアルでコミュニケーションが取れないクソみたいな人間が、ネットでちやほらされたくでやっているだけだろう。控えめに言って死ぬべき。

あの、感情論抜きで話すのでは……?

ああ、そうだった……と言いたいが。いいかげん限界だ。もう感情のダムを解放していいです。好きなだけ感情論を語ってください。なぜなら僕ら人間には感情があるから。

なんかかっこいいこと言ってるけど、結局は開き直りかい!!!

もちろんだが、これを理由に違法アップロード・ダウンロードを正当化するつもりはない。奴らは関係者全員に償う義務がある。だが、そんなゴミカスみたいな連中に作者が意識を割くことなんて、この上なく不毛なことだ。奴らはどうあってもあなたの作品を買うつもりなんてない。マンガにその程度の価値しか見いだせない連中なのだから。

違法アップロード・ダウンロードは断じて許すまじ。だが、それに心を痛めて活動を休止してしまう作家さんがいるのは、消費者としても創作家としても心が痛い話だ。

この記事で違法行為が減ることは無いだろうけど、少しでも作り手側が前向きに活動できるための支えになってくれれば幸いです。

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1件の返信

  1. コジ より:

    興味深い内容でした。

    違法アップの収益は微々たるものですね。リスクと見合わない。私ももちろん違法アップには大反対ですが、それでもどっかでその恩恵を受けてるのも事実ですし(図書館で有名小説家の本の貸し出しとか、これも本来ダメだと思う)この矛盾を持って生きていかねばならんのか。

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